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先日、家族で山形県銀山温泉へ行く機会があった。近頃温泉地づくりや外人女将で何かと有名になっていたので、一度訪れてみたいとかねがね思っていた。幸い知り合いの旅館があったので、そこに泊めていただくことにした。
銀山温泉は山形市から北へ60キロ、花笠踊りの発祥の地、尾花沢市の東部に位置する。
静かに流れる銀山川をはさんで木造りのこじんまりした旅館が並んでいる。三層、四層にかさなる屋根のひとつひとつに古きよき時代を感じさせる歴史が宿っているところである。温泉地としては、およそ260年前(寛保年間)から盛んになったという。
現存している旅館は、大正時代から昭和初期に建てられたものが多く、ノスタルジックな雰囲気をかもし出している。よく開発の波に呑まれなかったと感心した。しかも驚いたことに近年ほぼ年間100%に限りなく近い稼働率を上げている。
宿にチェックインしてから、早速川伝いに散策してみたが、浴衣姿のお客様が何十人も歩いていて、記念撮影や足湯を楽しんでいた。夕食後にまたでかけてみた。川の両側の各宿はそれぞれにライトアップされ、散策するお客様は明るい時以上に増えているではないか。多くの人が立ち並ぶ旅館の玄関前や橋の上で記念撮影などしている。この温泉地に来たら、必ず散策に出かけるというパターンが完全に定着しているようだ。
私が訪れたのは夏だったが、冬期は1メートル以上の積雪があるにもかかわらず、その雪景色の温泉街を見たいという都会の人たちで賑わうという。雪という悪条件を逆手に取っているとも言えるだろう。
草津の湯畑や伊香保の石段のように、ここ銀山温泉は川を挟んだ旅館の建物それ自体がシンボルとなっているのである。
わが老神温泉はどうだろうか。三十年前には、浴衣姿のお客様が温泉街をよく歩いていたのを子供心にも覚えている。行きかうお客様たちの下駄の音が今でも耳の奥に響く。
しかし最近は、営業している店も減少し、少なくとも宿泊客が宿から繰り出して散策すると言う状況ではない。多くの旅館が、宿泊客を外へ出さないで自館の中だけで消費させようとした営業戦略が、今となっては温泉街の衰退の一因とも言えるように思う。
幸いにして老神温泉には、片品川とそれに架かる橋、四季折々の渓谷美を楽しめる場所がある。観光協会や村当局の協力を得て、散策道を整備したり、あずまやなどの休憩所を設置し、案内看板を統一デザインにするなどして分かりやすくて散策しやすい環境を作ってきたが、なかなか効果を上げるのは難しい。これからの試みとして、片品渓谷のライトアップ(年間)や冬期の雪灯篭の設置、並木を作るための植樹の計画がある。
これらの計画は、老神温泉観光協会・旅館組合としてなされたものであるが、この春からは「利根村観光協会」が発足し、そこに移行するので、事業計画はきちんと引き継いでいかなければならない。
お客様のニーズが昔と今とでは変わってきているので、昔の老神温泉にただ戻せばいいとは私は思っていない。新たな老神温泉を創っていくことが課題ではないだろうか。具体的に始動するのはこれからだが、何かをやらなければならない時にきているのは間違いない。
不景気だから何もできない、と手をこまねいていては、何も変わらない。そればかりか衰退の一途をたどることは目に見えている。一日も早く、もっと多くのお客様がそぞろ歩くような活気ある老神温泉を目指し、諸方面の方々のお力をお借りしつつ努力していかなければならないと自分に言い聞かせている今日この頃である。
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